派遣社員の秘め事 ~秘めるつもりはないんですが~
「そういえば、あのとき、なにか言おうとされてませんでした?」
そう蓮に言われた脇田は、
「ああ……」
と言いかけ、
「なんでもないよ。
たぶん、なにかしょうもないことだった。
忘れちゃったな」
と言った。
何故だか蓮にそれを問う気が失せていた。
蓮は一瞬、微妙な顔をした。
勘の鋭そうな子だから、自分がわざと誤魔化したのに気づいているのかもしれないと脇田は思った。
だが、蓮が、
「そうですか」
と流してくれるのなら、それで済まそうと思った。
帰り際、蓮は律儀にゼリーをくれた。
「たぶん、脇田さんが買われたものより、賞味期限が早いので、早く食べてくださいねー」
とご丁寧に言って渡してくれる。
はいはいと、手を振ってくれる蓮に笑顔を返し、彼女の部屋を出た。
エレベーターホールに曲がる前に、振り返ると、蓮はまだこちらを見ていて、頭を下げてきたので、下げ返す。