派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 



 廊下のドアから建物に入ったとき、誰かとぶつかりそうになった。

 高い位置にあるその顔を見上げ、蓮は大きく頭を下げる。

「あっ、脇田さんっ。
 昨日はどうもありがとうございましたっ」

「あれから傷大丈夫?」
と言われたので、

「いや、脇田さんこそ、大丈夫なんですか?」
と言ったが、

「まあ、そんなに仕事に支障はないよ。
 パソコン打つのは、浦島さんがやってくれるしね」
と言う。

 まあ、支障あっても、この人は言わないだろうな、と思った。

「そうだ。
 今、あの悪霊に会いましたよ」

 そう報告すると、彼は、
「何処で?」
と訊いてきた。

「駐車場に居ました」
と言うと、脇田は木々の陰になって、今は見えないそちらを窓から窺いながら、

「そう、ありがとう」
と何故か言った。

「で、会って、また孕まされそうになった?」
と笑う。
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