心に届く歌
☆エルside☆
「……突然どうしたの?」
「エル様に対して、迷惑だと言ってしまい、本当に申し訳ありませんでした」
「シエル……」
「僕、ご存知だと、思いますけど、両親から、虐待…、に、合っていまして。
さっきも、言いましたけど、ずっと、ずっと、役立たずとか、言われてきて。
好き、なんて、言われたの、エル様が初めてだったんです。
付け足せば、僕に、生きる意味があると、頬を叩いて、怒ってくれたのも、エル様が初めてです……」
暗くてよく顔が見えないけど。
泣いているのだけは、わかった。
シエルの声が震えているし、ヒックとしゃっくりをあげつつ話しているので、言葉が途切れていたから。
「僕、ずっと、好き、なんて、迷惑としか考えたこと、なくて。
言われたことないですし、言われたとしても、そんなの、偽りでしかなくて。
だから、本当に、ごめんなさい。
迷惑なんて、害なんて、僕っ……何でそんな酷いこと言っちゃったんだろう…」
本格的に泣き出したシエルを、肩を探しそっと抱きしめる。
シエルに“好き”だと言った出来事を消したいと、わたしは思っていたけど。
シエルだって“迷惑だ”と言った事実を消したかったんだ。
嗚咽を漏らしながら「ごめんなさい」と謝るシエルを、わたしは強く抱きしめた。
シエル。
やっぱりあなたに、わたしは笑っていてほしいよ。