心に届く歌






久しぶりにソレイユ家に戻った僕は、寮に戻って荷物を整え、

執事服を着て本家へ向かった。

途中、僕がクザン家に向かった時、廊下で立ち話をしていたメイドさんたちに出会い、

目を見開き感激された。



元々療養だったはずなのに、いつの間にか僕がソレイユ家を辞めると思っていたらしい。

確かに体調が良ければクザン家で泊めてもらう代わりに、働くとは言ったけど。

どうやら僕の説明不足だったようで、「またお願いします」と言ったら喜んでくれた。

必要とされているようで、嬉しかった。




「久しぶりシエルくん。療養出来たかい?」

「……えっと…」

「アンスくんから聞いているよ。まぁ座りなさい」

「失礼致します」



僕はプランタン国王様と、イヴェール王妃様の前に座る。



「療養は出来なかったと聞いているけど、でも大事なものを見つけたようだとアンスくんは言っていたよ」

「はい。見つけました。
ですので、今日はお願いに参りました」



僕は膝の上でぎゅっと手を握り、頭を下げた。



「身分のことはわかっています。
ですが……改めて言わせてもらいます。

わたくしは、エル様のことが好きです」



おふたりは何も言わなかった。



「諦めようとしました。
エル様はプーセ様との結婚が待ち受けている。

今更可笑しいとは思いますが、
僕は、エル様のことが好きです。

諦めるなんて出来ないんですっ…」



沈黙が息苦しい。

だけど、言わないと駄目だ。

想いは言葉にしないと伝わらない。



「わたくしがっ……僕が、エル様を幸せにしたいっ…」





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