ポラリスの贈りもの

(豊島区南長崎町、スーパーCCマート前)


浮城「あの、星光さん。大丈夫?
  僕、なにか悪い事言ったかな」
星光「浮城さん」
浮城「ん?」
星光「北斗さんは、哀れな私に同情しただけなんでしょうか」
浮城「えっ!?」
星光「崖から身投げしようとした哀れな私に同情して、
  僕と一緒に来ないかって言ったんでしょうか」
浮城「あのね。
  確かに過去も今もカズはいろいろ問題を抱えてるけど、
  いい加減なこと言う奴じゃないよ。
  現に、今日だって君と約束をして神道社長に」
星光「でも、涼子さんとは今でも一緒に住まれてます。
  流星さんが帰ってきたのに、涼子さんの病室で彼……。
  過去にあったことも、流星さんが言ってたことと、
  浮城さんが今話してくれたことは同じですもの。
  私の入る隙はないです」
浮城「あのね。カズは星光さんのことを」
星光「今日は送ってくれてありがとうございました。
  お店に寄ってから寮に帰りますのでここで。
  北斗さんに伝えてください。
  もう私に連絡はしなくていいですって」
浮城「えっ(焦)星光さん?」
星光「気をつけて帰ってくださいね」
浮城「星光さん!ちょっと待ってくれ!」


一礼してドアを開ける私を、ドアを開けて車外に出た浮城さん。
その表情は驚きの形相で、虚を衝かれたように慌てている。
彼はこのままではまずいと思ったのか、直様私を追いかけて腕を掴んだ。


浮城「星光さん!」
星光「浮城さん、放してください」
浮城「涼子さんの病室で君がカズの何を見たかは知らない。
  病院でのあの二人のデスマッチを目の当たりにして、
  君がどう捉えてるのか、僕にはわからない。
  でも、君と再会するまであいつがどんなだったか。
  君にはわからないだろ。
  君こそ、北斗七星いう男をどれだけ理解してる!?
  どうして福岡を飛び出したのにここに居るんだ!」
星光「私が故郷を飛び出し何処に居ようと、
  浮城さんにも北斗さんにも関係ないです」
浮城「ああ。僕には関係ないさ。
  でもカズには大アリなんだよ!」
星光「そんなこともうどうでもいいの!
  お願いだから手を放してください!」
浮城「星光さん、こんなのよくないって!」
風馬「おい、お前!星光に何やってるんだ!」
星光「風馬」
夏鈴「あー!貴方、キラちゃんに何してくれてんの!」
浮城「夏鈴さん!?」


バチン!(頬を殴る音)


店頭で商品を並べていた風馬と夏鈴さんが、
私達に気がついて、風馬は血相を変えて走ってきた。
そして、私と浮城さんを力任せに引き離し、
彼の頬にいきなりパンチを食らわしたのだ。
夕方の買い物客で賑わう店頭を尻目に揉み合う二人を、
呆然と見つめて無言で涙を流す。
そんな異様な私に何があったのか、
夏鈴さんは全てを理解したようで、
慰めるように力強く抱きしめ、
温かい胸を貸してくれたのだった。

(続く)


この物語はフィクションです。
< 25 / 121 >

この作品をシェア

pagetop