約束のキミを。

お母様

「ありがとう」
レンにそう言っていると、廊下が騒がしくなるのを同時に感じた…。

来る…。

ガラガラ

ドアが開くと、お母さんが立っていた。


やっぱり…。




お母さんは三人の子持ちとは思えないほど綺麗だ。

透き通った肌。金髪の長い髪は私と同じで、パーマのようにくるくるしている。長身で、ものすごいスタイルがよくて、美しい。お母さんも、結婚する前からかなりの令嬢だったらしく、いつも優雅で可憐だ。

でも、いつも氷のように冷たい目をしてる。

お母さんは、私のベッドの横に大きなバッグを置くとすぐに何も言わず、出て行こうとする。

「お母様。いつもありがとうございます。」

私は、お母さんの背中に向かって言う。

お母さんは、振り返ると、私の顔をじっと見つめた。

私は、一生懸命作り笑いをすると、お母さんは、サッと目をそらして出て行こうとする。

「あの!俺、風谷 蓮太っていいます!こんにちは」

レンは当たり前のように、爽やかな笑顔を向ける。

お母さんは、チラリとレンを見ると、軽く会釈をしてサッサッと出て行った。

「…。あれ、本当にみくの母さん?」
驚いたようにレンが言う。


驚くよね。そうだよね…。


でも、いつもあんな感じだもん。

「お母さんはね、私のことが嫌いなの。私の存在を抹消したいと思ってるのかもしれない。なんでも完璧なお母さんにとって、私はいらない子…。だから、39なんて名前つけられちゃっんだもの。」

私は、レンに心配かけないように、へへっと軽く言って笑った。

「娘の事を、抹消したいとか、嫌いな母親なんていないよ!」

レンは真剣な顔で私を見つめる。

「ごめんね、レン。レンの気持ちはうれしいけど、本当に私は嫌われてるの。お母さんが私の事いらないって言ってるのも、直接聞いたし…。」

「それは、冗談かなんかだよ!」
レンは、一生懸命そう言ってくれた。

「ありがとう。でもね、私のお母さんは冗談を言う人じゃないの。」


できるだけ、明るく言おうと思ったけど、私の声は震えてかすかにつぶやいただけだった。




思い出してしまうんだ。
あの日私は「いらない子」と言われたことを。







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