約束のキミを。

優しさ

千奈ちゃん…。 






千奈ちゃんを乗せた車は、どんどん離れていくのを私は、ずっと、窓から見ていた。



千奈ちゃん…。



私の、隣のベッドは、もう誰もいない。

天使のような笑顔をもう見られないんだ…。




勝くんは、車が窓から見えなくなると、病室から黙って出て行った。

私と同じなのかな?寂しいのかな?




私は、すごくすごく、寂しいよ…。



ぽん




レンが、私の肩に手を置いた。

「みく…。」


もう、いいよね?泣いてもいいよね?







「レンーーー!!!う、うわぁーん!!」






洪水のように涙が溢れだした。声を出して大泣きした。叫ぶように泣いてしまう。千奈ちゃん…。千奈ちゃん…。



寂しい…。寂しいよ…。


千奈ちゃんの前では泣けなかった。あんなに小さな子が笑って退院するのに、お姉さんの私が泣いてすがるなんて出来なかった。

レンは、なにも言わずしゃがみこんでなく私の頭を撫でた。

いつも、千奈ちゃんにしていたように。


私、知らなかった。

元々何も無いと思ってた。


私には友達も優しくしてくれる家族もないと思ってた。



私は、空っぽなんだと思ってた。




でもそんなことなかった。
気づかなかっただけで、私の事を大切に思ってくれる人がいた。

そして、初めてそれを失った。

失うものなんて何もないと思ってたのに、失うものの恐怖…。


大事な人ができるって失う怖さもあるんだね。

こんなの、初めてだよ。

苦しくて切なくて寂しい。





いつか、レンも…。


「みく、大丈夫だよ」


ギュッ


レンがそっと、泣いている私を抱きしめた。


体が優しい温かさに包まれるのを感じる。


私は、レンの胸に顔をうずめて泣いた。


レンは、それを慰めるように、大丈夫だよ。って伝えるようにずっとずっと、私の頭を撫でていた。





私…。もうなにも、失いたくない…。














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