約束のキミを。

ごめんね

私は、レンの検査が終わるまで病室に戻る。

不安で、不安で、怖くて…。目の前が真っ暗に感じる。

私が、あの時フラフラしなければ…。


「これ。」

勝くんが、私にオレンジジュースを差し出す。

「ありがとう…。」




受け取ったけど、飲む気になれずオレンジジュースの缶をギュッと握る。







「あいつなら、きっと、大丈夫。お前のせいじゃないだろ。」




「ううん。私のせいなの…。私の…。」




じわりと涙が出てくる。




「でも、きっとあいつはお前のせいだなんて思わねーよ。あいつの目が覚めたら、一緒に会いに行くぞ。」



「うん…。勝くん…。ありがとう…。」



いつも、ぶっきらぼうな勝くんが、今日はいつもより優しい。

それが嬉しくて、心が温かくなっていくような、張りつめていた持ちが緩んでいくような気持ちになる。






ありがとう…。





ごめんね…。








「みくちゃーん。レン君の検査が終わったんだけど、面会に来る?今は、個室にいるわよ。」

看護師さんが入ってくる。


え?


「レン大丈夫なんですか?」





「大丈夫よ。軽い脳震とう。検査したけど、特に異常はないし、まだ目を覚まさないのは心配だから、明日まで個室にいてもらうつもりだけどね。」

そう言うと微笑んで出て行ってしまった。

「行くぞ。」



勝くんに引っ張られるようにして、病室を出る。















レンの病室は、静かだった。

レンは、いつも昼寝する時みたいに綺麗な長いまつげを伏せている。


勝くんは、その寝顔だけをじっと見つめると、くるりと回れ右すると出て行こうとする。


「え?もう行くの?」


「こいつ大丈夫そうだし、お前が側にいてやれ。」

そう言って、軽く微笑むと出て行ってしまう。




勝くん…。








私は、レンに近づき、ベッドの横の椅子に座る。


そして私は、レンの右手を握りしめた。

「レン…。」



名前を呼んでも、返事をしてくれない無力感…。


レンっ…。




窓から、夕焼けが差し込んでくる。

握ったレンの手が冷たくて不安になる。


「レン、痛かったよね。私のせいで…。レン、驚かせたよね、私がフラフラしたから、ごめんね…。」








     ……。


返事がないのは、わかってるけどでも、なにか、言わずにいられなかった。





「レン。ごめんね。ごめんね。ごめんなさいっ…。」

ポタポタと涙がふいに溢れ落ちる。

「レン。私のせいでごめんね。ねえ早く目を覚ましてよ。私のせいで傷つくレンなんて見たくないの。見たくなかったの。お願いだから、目を覚ましてよ。」

ギュッとさらに手に力を込める。


レン…。ごめんね。










「みくっ…。」


え?


そっと、微笑んでレンの左手が私の頬に触れる。


「何泣いてるの?みく。」

「レンっ!!!」



声と同時に、たくさんの涙が溢れる。

レンは、私の頬に触れた手でそっと私の涙を拭いてくれる。


「みくは、泣き虫だなぁ。」

そう言って、ニコニコするレン。




「レンのばぁか!本気で心配したんだからね!!」




「俺のせいでごめん。」


「え?」


「俺のせいでみくを不安にさせたでしょ?驚かせちゃったよね?ごめん。」




勝くんの言った言葉を思い出す。

本当に、レンは優しい…。そして、バカだ。

私が悪いに決まってるのに…。


ほんとにバカ…。


「レンっ…。私こそごめん。」




私の頬に触れているレンの手に自分の手を重ねる。

「みくのごめんは聞き飽きたよ。俺の右手握って何回も謝るんだもん。目覚めちゃうよ」


「ごめん…。」

「ほらまた!俺は、みくのありがとうって言葉が聞きたいな」

そう言って、ニッコリ笑った。


その顔が嬉しくて、なんだかまた泣いてしまいそうになるのを必死に抑える。

「助けてくれてありがとう!」


伝わったかな?私のありがとうの気持ち。










レンは少し照れくさそうに笑った。





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