約束のキミを。

誓いの魔女

あれから、毎回舞さんは来るたびに私の髪を結ってくれた。
いつも、綺麗でかわいい舞さんがしてくれる髪型は、やっぱり品があって、丁寧で嬉しかった。




そして、和斗や舞さんが、高校生活最後の文化祭を終え、話をたくさん聞き終わる頃には、もう11月に突入していた。レンが、去ってから2ヶ月ちょっとが経つけれど、一度も姿を見せていない。



「勝くん!お散歩に行きませんか?」

私の誘いに、勝くんは無言で立ち上がる。最近、誰も来ない平日は二人で、屋上に行くのが日課になっていた。

ただ、二人で並んでベンチに座って空を見上げる。私は、風に吹かれながら本を読んだり、流れる雲の形を眺めたり、千奈ちゃんのことを考えたりした。

隣に座る勝くんも、黙って本を読んだりしていたけど、たまに物思いにふけるようななんともいえない顔で宙を見つめていて、それがすごく寂しそうに見えた。

秋の透明な空気にさらされて、このまま風とともに吹き飛ばされどこか遠くに行ってしまいたいなんて、どうでもいいことをかんがえてみたりもした。


そして、勝くんとお互いに、ポツリポツリと短い会話をして肌寒くなってきたら、部屋に戻る。そんな生活。

私は、この時間を嫌いじゃなかった。

勝くんは、側にいてくれる人なんだなと感じられるだけでよかったんだ。
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