地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
「女の子に苦労しない容姿してるのに、私にからんできたり、好きにさせるなんて言ってたけど、私をからかうためにしてるならやめて」
「別にからかってなんかないけど?俺は玲美の事、前から好きだったし」
「えっ?冗談はもういいってば」
「冗談なんか言うかよ」
そう言った彼は私に近づいてくる。
その顔からは冗談を言っているようには見えなくて、戸惑う私は後にさがり、とうとう壁に追い詰められてしまった。
私は彼の顔が見れずに俯く。
そんな私を更に追い詰めるように私の顎に手をやるとグイッと上に顔を上げさせられた。
「特別残業だけど……二人きりの夜のオフィスでキスの練習するから」
キスの練習?
な、何それ!そんなの出来るわけないじゃない。
「何言ってるの……私には山岡主任が居るんだし誰があんたなんかと」
「玲美に拒否権ない筈だけど?」
そうだった、私は弱みを握られているんだった。
「いい子だね、じゃあご褒美のキスをしてあげるよ」
そう言った私を抱きかかえ、彼の机の上に座らせるとキスをしてきた。
自分でも認めたくないのに、彼のキスが上手過ぎて何だか気持ちいい。
キスだけでこんなにも欲情するものだって初めて知った。
密着したままのキスで、私の両足の間に彼の体があり、私は彼にしがみつかなければ後に倒れてしまいそうになる。
すると彼は私の太ももをキスをしながら撫でた。
「……っん」
口からそんな甘い声が出てしまった自分にも驚いたが、何で太ももを触ってきてるのよ。
唇を離した私は彼に言った。
「何処触ってんのよ変態」
「俺が変態ならだ山岡主任だって玲美の体に触れてるから変態だな?それに俺はただ触っただけでセックスを要求したわけでもないし、玲美だって感じたから声でたんだろ?」
「そ、それはっ……」
く、悔しい。
何も言い返せない自分に腹が立つ。
「悔しかったら玲美もキスの腕を上げたら?キスなんて沢山しないと上手くならないし、山岡主任にキスが上手くなったと言われるくらいにね?そしてキスをする度に俺を思い出してくれたら最高だな。玲美の中に少しずつ俺を植え付けて、俺じゃなきゃダメだって言わせてやる」
「そんな事、絶対に言わないんだから!」
「ハイハイ、じゃあお疲れ様。もう帰っていいよ玲美さん」
彼が私から離れると、直ぐに机から降りて鞄を持ってオフィスを出た。
何が特別残業よ!
何が感じたよ!
確かに、声が出てしまったけど好きになんて絶対にならないんだから。
キスが上手いからって調子に乗るなぁー。
私はそう心の中で叫んで家へと帰って行った。