地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜




陽は私を抱きしめて背中を優しく撫でてくれた。
私は言いたい事を言って陽の胸で声を上げて泣いた。


「玲美の三年間は全部が無駄じゃなかったと思うぞ?恋愛は楽しい事ばかりじゃないしぶつかり合う事だってある。皆そうやって成長していくし、長く付き合ってるから結婚するとも限らないしな。時には道に迷う事もある、だけど玲美は自分でちゃんと正しい道に戻ったんだ。これからは自分の幸せを考えていけるし遅くないだろ?」


「陽……」


「だからさ、俺にしとけよ?俺なら玲美を泣かさないし幸せにしてやるからさ」


優しく微笑んで私を見つめて言うから思わず『うん』って言ってしまいそうになった。


だけどまだ恋愛なんて考えられないし、そう言ってくれるのは嬉しいけど好きにならなきゃ『うん』とは言えない。


「嬉しいけど……好きにならなきゃ陽とは付き合えない」


「チェッ、今なら『うん』って言ってくれると思ったのに残念だな。まぁ俺は諦めないし必ず玲美を好きにさせるからな。さぁ腹減ったし何か食べにでも行くか」


「うん」


もう私の目からは涙は流れていなかった。


これでもう私は前に進めるんだ。



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