幸せの形
千歳さつきの場合
「眠い?」

くすりと笑いながら千歳は、隣のソファーに座っている鳴海に声をかけた。

ぼんやりとテレビの画面を見ていた鳴海が、一つあくびをした所だった。

「うん、そうだねぇ…」

部屋の時計を見ると夜中の11時を回っていた。

さっきまで一緒にビデオを見ていた、喫茶店を自宅で営む千歳のおじ夫婦は「お休み」と言って寝室に入って行った。

近くのアパートで一人暮らしの青年を気づかってか、オーナー夫婦はときどき鳴海を夕食に誘った。

千歳のおじは酒飲み相手が出来たと喜んで、良く一緒に鳴海と飲んでいた。

かなり酔って夜もふけると、この居間で泊まっていったりすることもあり…そんな訳で千歳は、いつものように「泊まってく?」と言ったのだった。

見終わったビデオを巻き戻しながら、ふと隣に目をやると鳴海が千歳を見ていた。

何やら真面目な顔をして、黙っている。

「?」

カシャンと音がしてビデオが巻き戻った。気にせず取り出しに立ち上ろうとした時、突然うしろに手を引かれ千歳は鳴海の胸の中に突っ込んでしまった。
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