七夕幻想 《囚われのサンドリヨン後話》
「で?ダンナ様は今どこへ?」 

「先週まではドバイ、今週はたしか…ラズベガス……だったっけ?」

 ポリポリ……
 エビセンをかじりつつ、私は彼女に返事をした。

「へ~え」
 目を丸くした彼女。
 私は、話がそちらに向かったのを機に、すかさずたまっていた鬱憤を吐き出した。

「ちょっとこれ見てください!
 私ね、彼に毎日、アカチャンの成長と家族の様子を写メってるんですよ」

 私は、彼女にスマートフォン画面を見せた。

 “驚嘆(ビックリ)、同時に寝返り!”
 の文字がアニメーションになって動いている写真に、オオガミさんは目を細めた。

「カ~ワイ~~イ♥」
「じゃなくて。彼からの返事の方!」

 溢れんばかりの私からの、毎日3回×50日のメッセージを画面に流してゆく。

「ね?この2ヶ月、150回のメッセージに彼からの返事はたった5回だけ。『分かった』『今ドバイ』『ああ』『ねむい』『今べガス』ヒドくない⁉」


「ははは…すごいや、全部暗記してるんだネ」
 苦笑いを浮かべる彼女。

「うう~、きっと今ごろは、私達のコトなんかすっかり忘れて……
 カジノのVIP席で、ラインダンサーのキンパツ美人をお膝抱っこしてハマキをくわえてたりするんだぁ~~」

「お、落ち着いて四葉チャン‼」
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