七夕幻想 《囚われのサンドリヨン後話》
 大声で喚く私に、明らかに “シマッタァ!” という表情をしつつも、彼女は必死で嗜めてくれる。

「えっとね、金髪美女はともかく……
 男の人って、照れ屋サンですからね。素っ気なく見せても意外に喜んでるもんですよ?
 ねぇホラ、全部既読になってるワケだから」

「でも!」

 まだまだ言い足りない愚痴の第2段を炸裂させようとした時だ。


「美咲ぃ~、ただいま。オヤ、トーコちゃん(オオガミさんの下の名前)。来てたのかい」
「あ、四葉チャンのお父さん。お邪魔してまーす」

 全く、父の対人スキルには感心する。
 すっかり仲良しの2人がハイタッチする横で、私はプクっと剥れて言った。

「父ちゃんってば、また工事現場に行ってたの?」
 父ちゃんは朝早くに、日雇いの仕事を探しに出掛けてしまう。

 執事サンに『どうかお止めくださいっ』と嗜められても、スィーッといつの間にか抜け出て居なくなっているのだ。


「………あ、そうだ、美咲!」

 都合が悪くなったのか、父ちゃんはしれっと苦言を聞き流した。


 にぃっと笑って、背中に隠していたそれをサッと出し、私の手に持たせてくれる。

「ボウズ達にと思ってよ」
「あ……」
 
「あ~、ササの葉だ!すごーい、何処にあったんです?」 

「それがさ、今日の現場。道路わきの草刈り作業だったのよ……」
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