七夕幻想 《囚われのサンドリヨン後話》
 2人が話し込む横で、受けとったササの葉をマジマジと見つめる。

 父ちゃんが書いたのだろう。
 既に『安全第一』とデッカイ字で書かれた黄色い短冊が着けてある。
 
 
 毎日が慌ただしくって忘れていた。

 今日は7月7日。

 七夕の日だ。
 


「ホラ、美咲。お前もイッパイ書いとけ。天の神様が、願いを叶えてくれるぞぉ」

 言いながら父は私に色紙の束を渡した。

「いっぱいだなんてバチアタリだなあ……
 でも、ロマンチックですよねえ。
 牽牛と織女は今夜、1年に1度っきりのデートするわけですから…私ならそれだけじゃ、とっても耐えられないけどね~」

 ウットリと空を見上げるオオガミさん。

 と、色紙を目敏く見つけたフユキ君が、トタトタと寄ってきて、全く気がつかない母親の膝上によじ登ろうと格闘している。


 年に1度……か。
 ヘタをすれば、私達もそうなりかねないな。ブルッと身を震わせながら、私は水色を一枚抜いて半分に切った。


 そしてこっそりと、今一番の願いを1つそこに綴ったのだ。


“タカトラさんに会いたいよ”


と。
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