最初で最後の恋。

異常事態


朝はなかなか居ないお姉ちゃんと珍しく朝食を食べながら現状をお互いに話し遅刻遅刻〜なんてベタな事を言って家を出た。
行ってらっしゃいという母はいつになく嬉しそうに笑っていた、そうか今日は結婚記念日だ。嬉しそうな母を見て私もなんだかとても嬉しかった。

とはいえ本当に遅刻しそうなので走って登校していると、後ろから親友の夕佳が凄いスピードで自転車を漕ぎ私の名前を叫んでいるのが聞こえたので振り返る。
そこには




「かァーえェーでェー!!!!!」


と叫びながら夕佳が鬼の形相でこちらに来ていた。


あまりの形相に
「いやぁぁぁあああ!!!!!なにィィィ??!!!」
と叫びながら逃げると直ぐに捕まえられ、自転車の後ろに乗せられた(良い子は真似しないでネ☆)


「お前俺のLINO既読スルーしやがっただろ!!」

「えへへ、返信しようと思ってそのまま寝ちゃった、ごめんね。」

「まあ、生きてて良かった…マジ心配したんだかんな!」

彼は親友で幼馴染の越智夕佳(おち ゆか)、女の子と間違えられて付けられたその名の通り女の子でも通じるほどに可愛い。
でも、性格は男の中の漢って感じでクラス一モテるらしいけど、彼女は居ない。

「何ボーッとしてんだよ、着いたぞ?」

うんと笑って降りると靴紐が切れてた、何だか不吉だ。
靴紐が切れたせいで上手く歩けないのでよろよろしていると丁度前から不良達が走って来てて慌てて逃げて足を挫いた、ので夕佳に背負ってもらい教室へ行く。
この学校は元は男子校だったので女の子が少なくて夕佳に背負われて行くと涼一がてけてけと歩いて来た。
「おはよー!」
この涼一という男はいつも笑っていて結構格好いい顔をしているんだけど、性格が少しクレイジーだからモテない、私は可愛いと思うんだけれど。

「どうしたのその足?!夕佳に折られたの?!」

「ううん、違うの。ちょっと挫いちゃったみたいで…」

私がそう言うと良かったと胸を撫で下ろす涼一はそのまま宿題の話をしていた。




それからチャイムが鳴り、授業が始まり終わってその繰り返しが続いて。
いつもの変わりない日常が続いた。



そして帰りのHRが終わった、何事もないと思っていたら帰りに先生に呼び出されて居残りしてまで資料作りを手伝わされた。


ここから歩いて帰るのはとても億劫だから涼一か夕佳に自転車の後ろに乗せてもらおうと思っていたけれど二人はもう帰ってしまったと思いトボトボと足を庇いながら玄関へ向かい廊下を歩いていると夕佳が正面玄関で座っているのが見えた。



私の足音に気付いたのか後ろを振り向いた夕佳は仕方ないなと笑って自転車の後ろに乗せてくれた。




捕まってろよ、という夕佳に腕を回してしがみつくと
「お前ちゃんと飯食ってる?」
と腕を鷲掴みにされた。
細いと褒められたのだと気付くまでに三十秒近く掛かった。
ふふふと笑い私の家へと続く坂道をひゅーっと自転車を降りて行った、自転車は気持ち良さそうに風を切って居残りのせいで少し暗いけど夕陽が綺麗に輝いている、それが自転車に反射して赤くなっている、




「ね、ねえ。夕佳、あれうちの家の近くだよね、?」

轟々と音を立ててかなり遠くからでも見える位燃えている家は我が家の近くで。

急ぐぞといった夕佳の表情はいつもよりずっと強張っていて、私は家族が無事であることを祈るしかなかった。


自転車を転がし続けて十分程度、着いたのは消し止められ掛けた紛れもない私の愛した家で、我が家は全焼し私が愛しい家族に会えたのはその日の病院で。
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