また、部屋に誰かがいた
部屋に誰かがいた【ゆうちゃん】
1980年2月から3月にかけて、富山・長野の両県で若い女性が誘拐されるという事件があった。犯行現場付近では赤いスポーツカーが目撃されており、その手口から2つの事件は同一犯によるものと見られていた。
誘拐された女性は殺害され
連続殺人事件として当時、世間に衝撃と恐怖を与えた事件だった。

その後、警察の捜査で1980年3月30日、富山市の自営業の女と交際相手の男の二人が逮捕され、事件は解決した。

そんな富山・長野・連続女性誘拐殺人事件の犯人が逮捕される直前に起きた怪奇現象として
長野県白馬村で当時、ある「怪談話」が広まっていた。

その「怪談話」とは
この二人が逃亡中に長野の温泉旅館を訪れたときの話である。


白馬村を見下ろす山は白く、村中に雪が積もっていたある夜の
21時を少し回った頃
とある木造の小さな温泉旅館に一組の男女が訪ねて来た。

二人は旅館の主に
「部屋空いてますか?泊まりたいんですが…」

「空いてますけど…この時間なので、お食事はお出しできませんが…」
そう答える旅館の主に

「構いません」

寒そうに旅館の玄関で
そう答えた二人だったが
突然、

「わあああん!恐いよぉ!恐いよぉ!」

その場にいた
旅館の主の娘の優香ちゃん(当時5歳)が急に泣き出して叫び始めた。

慌てた旅館の主が
「どうしたの?何が恐いの?お客さんが驚いてるでしょ?」

「そのひとの後ろに恐いお姉ちゃんがいるよ!」



…………!!!


「目と鼻から血が出てるよ!恐いよ!恐いよ」

「優ちゃん!止めなさい!
一体どうしたっていうの!」

ところが

それを聞いた客の二人は
急にガクガクと震えだし
慌てて逃げるように出て行った。


「優ちゃん!優ちゃん!」

初めて見る異様な様子の娘に旅館の主であった親は当惑してしまった。

やがて、娘が落ち着いてから
そのときのことを尋ねると

「恐い顔したお姉ちゃんが『優ちゃん…優ちゃん…』って」



それからしばらくして男女二人は逮捕された。

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