また、部屋に誰かがいた
冷たいコンクリートの上に電源が切られて置かれているP15。

厚い雲に覆われた夜空は周辺の街の灯りに照らされて濃い紫色と灰色が混ざったようだった。
やがて、そんな冬の夜空から彼の頭上へと雪が舞い落ちる。
それは白く、静かに、ゆっくりと。


「P15-A?じゃあ、ピーくんだね!よろしく!」


すると突然、ブウン…という音とともにP15に勝手に電源が入った。
彼に降る雪は、彼の頭の上で自らが発する熱により溶け、水滴となって流れ落ちる。


「ピーくんは雪を見たことある?」


静かな夜に降る雪は沈黙したままのP15を優しく包む。


「ピーくん!中庭に行こう!」


やがて雪は香織がお気に入りだった中庭のベンチも、遊歩道の石畳も、街路樹の枝も、全て白く包み込んでいく。


「わぁ…雪だぁ…綺麗…綺麗だね!」


P15がゆっくりと顔をあげ、空を見上げた。
静寂の濃い藍色の空には広がる白く淡い光たち。

あの日、中庭で香織と一緒に見たのも、今夜と同じあわ雪だった。
それを見上げて彼女は楽しそうに笑っていた…


「ほら!アタシの帽子と『おそろ』だよ!」


やがて、P15に降り積もる「あわ雪」は溶け、水滴となって彼のモニターカメラを伝い流れ落ちる。

それはまるで…

機械であるはずのP15が泣いているように見えた。



オソロ…ウレシイデス…








「部屋に誰かがいた」









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