また、部屋に誰かがいた
それから数日が経って、再びあかねは玉木がいる廃ホテルを訪れた。
玉木との約束を守り、彼女は「仕事でお世話になっていたのでご焼香に来た」との理由を作って、大阪にある玉木の実家を訪問した。そこで母親から「引っ越しをすることになる」ということと、その理由が「住宅ローンの残債を精算するため」だということを聞き出した。
高齢となった母親はローンの支払いが滞るようになってしまったためだ。
家賃の安いアパートに移っても、年金暮らしの彼女の生活は決して楽にはならないだろうし、それ以上に思い出のある家に対して未練があることは、あかねにもわかった。
同情したあかねは「なんとかできないだろうか?」と考えた挙句に、ひとつの解決案を持って玉木を訪ねたのだった。

「やっぱり…そうやったんか…」
彼の母親について、あかねからの報告を受け、玉木は下をうつ向いてしまった。

「でもね…アタシにひとつ策があるの。乗る?」

「策…?」

「そう!」




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