また、部屋に誰かがいた

おかぁちゃん

いつもの旧宴会場には廃ホテル中から、あかねによって集められた地縛霊たちが集合していた。
なんの説明もなく強引に呼ばれた彼らはザワザワしながらあかねの説明に耳を傾けた。

「え~、皆さん!お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます!」

「別に…忙しくはないけど…」怪訝そうに囁きあう地縛霊たちにあかねの話が続く。

「このたび、この廃ホテルで心霊番組のロケを計画しています」

「はぁ?」

「皆さん!大いに頑張って、音をたてたり、バンバン映り込んでいただいて番組を盛り上げていただきま~す!」

「はぁぁぁぁ!!」

あかねの計画とは、これまでにない心霊現象を映像に収め、その番組を買ってもらってお金を作るというものだった。

「既に企画は通っていて、撮影スタッフも発注済で~す!」

無理矢理、集められ、そんな寝耳に水な話を聞かされた地縛霊たちは動揺した。

「いやいや…映りこめって…」

「なんのために、そんなことするんだ…?」

「勘弁してくれよ…そんなの…」

あまりに急な提案を受けた地縛霊たちが一斉にザワつき始めた。

そのとき、騒然とする旧宴会場にあかねがテーブルを強く叩く音が響く。

バンッ!!

「いいから、やるの!!」

「………」

ようやく静かになった旧宴会場であかねは

「皆さんには台本どおりに、きっちり演じていただきます。とにかく、全てのテレビ局が欲しがるような最高に怖い心霊番組を作りたいと思うので、演出も入れますが、まずここで出演地縛霊を決めるオーデションを執り行いたいと思いま~す!まずは…あなた!そこの浴衣のお兄ちゃん!」

「ぼ…僕ですか…?」

突然あかねに指名された青年は緊張した面持ちで、そう答えた。

「そう!君!こっちに来て!」

呼ばれて前に出た20代前半くらいに見える霊にあかねは

「なんか、怖いセリフ言ってみて!」

「え!そんなん…急に言われても…」

「早く!」

「え…ええと…うらめしやぁ…」

「なにそれ!使えないやつ!下がってよし!」

強引に連れてこられ、無理矢理オーデションだと言われ、その挙句に「使えないやつ」とまで言われてしまった彼は、すっかり心が折れてしまった。

「じゃあ!次は…」
部屋のなかを見渡したあかねは一瞬、女装趣味の山根孝弘と目が合ったが、そこはスルー。

「俺も…やろうか…?」
なんとなく皆に申し訳なく感じて、玉木がおずおずと手を挙げたが、それに対しても

「心霊番組ナメてんの?!」

軽く「ちっ」と舌打ちしてから冷たく断った。

それから幽霊として見栄えの良い者を数名選んだあかねは徹底した演技指導を行い、合わせてカメラに写り込み易くなるコツも伝授した。
他にも、勝手にドアが開いたように見せる係や、物音をたてる係、声だけ係などのキャスティングを決め、
その日から「稽古」と称したリハーサルを何度も行った。

やがて本番当日を迎えたリポーター役のあかねと撮影スタッフに、彼らは空前絶後なまでの最高の心霊映像を提供したのだった。
企画は大成功。あかねの目的は達成された。
















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