また、部屋に誰かがいた
「何してんのや!お前ら!」
玲奈たちと同じく学校帰りの圭太だった。

「圭太!」

「お前こそ、なんやぁ!かっこつけてっとケガすっぞ」
4人の男たちは数で優位にいるため、余裕の表情で圭太に言った。

圭太は手に持っていたカバンを路上に置くと

「俺は北高の鹿島や!名前知っとんのやったら失せろ!そしたら勘弁したる!向かってくるヤツは覚悟しいや!」

「鹿島…北高の死神…」
一瞬ひるんだ4人だったが、ナンパの途中で男に邪魔されて逃げるなんてみっともないことはできなかった。それにこっちは4人だし、負けるわけがない。圭太のことは知っていたが、4人はそう考え、1対4のケンカが始まった。

しかし、圭太は強かった。
あっさりと二人が倒され、残った男達も逃げ腰になっていた。しかし、玲奈の腕をつかんでいた男は、そのまま歩道に寄せて路上に停めてあった車に向い、脇を車が通る運転席側に玲奈を連れて行こうとした。その男を圭太は追いかけ、男の肩に掴みかかって
「その手ぇ離せや!」
と叫んだ。

そのとき、圭太に捕まれた肩を振りほどこうとした男に突きとばされるかたちで玲奈が車道に倒れかかってしまった。

「あかん!」

慌てて圭太は玲奈の体に手を伸ばし、彼女を再び引き戻したが、その反動で今度は彼の体が車道に飛び出してしまった。
そのとき

1台のトラックがそこを通った。

「圭太!」

「これ…やばいんやないか…」目の前で事故を目撃してしまった男たちが、そう言って逃げてしまったあと、残った玲奈は路上に横たわる圭太の横で叫んでいた。


「救急車!救急車!お願い!誰か…早く救急車!」



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