また、部屋に誰かがいた
真っ暗な山道を車のヘッドライトの明かりだけを頼りに、僕たちが乗った車は例の心霊スポットを目指していた。
再び車の後部席で僕の隣に座ってた木下をよく見ると、

彼は目を大きく開き、顔じゅうに汗を浮かべていた。
それは険しく、苦痛に近い表情で得体の知れない「何か」を見ているようだった。
半開きの口からは時折、
「うう…」
…といった息が漏れ、両手は膝の上で固く握られ、膝は忙しくガクガクと震えているようにも見える。

そう言えば以前に彼は
「自分は霊感が強い」とか言ってたな…
そんなことを思いだし、僕は不安な気持ちになっていた。




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