また、部屋に誰かがいた
公園の公衆トイレで手を洗い、返り血を浴びたTシャツを脱いで、予め手提げカバンに入れておいた綿シャツに着替える。
手や顔を洗って血を落とし、ナイフも洗ってから、そこにあった鏡で洗い残しがないことを確認すると、彼は公園を出て、さっき歩いた駅からの道を戻っていた。

まだ彼の中での興奮は収まっていない。
これまで、ずっと抑えていた衝動を3か月前に爆発させてしまってから、彼はもはや自分を抑えることができなくなっていた。
それどころか、この残虐な行為に快感すら感じていたのだ。


しばらく歩いて、駅前に差し掛かったとき、彼はそこで見覚えのある人物を見つけた。

「あいつは…?」

それは、20代前半の男で、恋人と見える同年代の女性と二人で歩いていたが、彼にとっては決して、忘れることのできない男。その顔も、ずっと鮮明に覚えていた。

彼の脳裏にある映像が浮かぶ、悲鳴、赤い血、血塗られた包丁、そしてそこにあの男がいた。

首を圧迫されているような息苦しさを感じる。

「でも…、あいつは、あのときのまんまだ?いったい…?」


何かを疑問に感じながらも、彼は、その男が片時も忘れることのなかった「復讐の相手」であること確信した。

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