また、部屋に誰かがいた
翌朝、まだ早朝に鳴った達也のスマホの着信によって、彼は目覚めた。電話の相手は武田教授だった。

「木島君、土曜日の朝から申し訳ないが、予定がなければ手伝ってほしいことがあるんだ」
「教授、どうしました?」
「例のシリアルキラーが昨夜また、犯行を行ったんだ。今日の午後から、警視庁と埼玉県警の合同捜査会議があるんだが、そこでプロファイルを発表する。その資料の準備を手伝ってほしいんだが」
「わかりました。すぐ向かいます。教授は今どちらにいらっしゃるんですか?」
「私は本庁にいるんだが、君はどこだ?」
「今日はアパートに帰ってます。」
「そうか、ちゃんと休めたかい?」

達也はまだ、すやすやと眠っている侑里の寝顔を見てから
「はい」と答えた。
「警察がそこへ迎えの車を出してくれるそうだ。30分ほどで着くそうだから、それまでに支度しておいてくれ」
「わかりました」

武田教授との電話を切り、達也がテーブルの上にスマホを置くと

「どうしたの…?」
侑里が起きたようだ。

「いま教授から電話があって、今から警視庁に行かなくちゃいけなくなったんだ。侑里はどうする?」
「う~ん?達也は今日も帰ってくるの?」
「侑里が待っててくれるんなら、帰ってくる」そう言ってから、達也は自分のセリフに少し照れくさくなってしまった。侑里はニッコリ笑って、
「じゃあ、今日もご飯作ってあげるね」
達也が出かける準備を終えた頃に、埼玉県警の私服警察官が迎えに来た。
侑里を部屋の残し、彼らを乗せた車は警視庁本庁に向かった。

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