一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 唇が優しく重なる。


 優しいキスを成瀬は幾度か落とし、それから深くて長いキスに変えた。

 息が苦しくて心臓が壊れそうなキスが、夜の始まりを告げる。

 成瀬の大きな手が、私の心をほぐすように胸元を滑り落ちた。


(ああ、好きだな……。成瀬が……愛しくて……)


 そして嬉しい。


 ドキドキしすぎて心臓が壊れてしまいそうで怖くなるのに、それなのに成瀬に抱きしめられることが嬉しくて嬉しくて……泣いてしまいそうだ。


「……春人」


 細くこぼした彼の名前を精一杯の愛しさを込めて呼べば、また深い口づけを落とされる。


 吐息が全て奪われて、文字通り、成瀬は私を夢中にさせた。

 二人の体温が溶け合い、やがて互いの境目は消え失せる。
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