一寸の喪女にも五分の愛嬌を
(ちょっと……はぁ!?)


 なんだこの人は?

 どこをどうしたら、そんなとんでもない話になるんだ!

 唖然として開いた口がふさがらない私の横で、成瀬は盛大に噴き出し笑った。

「あははは、怜司さん、それ違うって!」

「違う? 何がだ?」

 笑いを納めた成瀬は、おもむろに私の肩をグイと自分へと引き寄せ、口元だけで笑みを作る。

「先輩は、そんな甘いもんじゃないって。清楚で優しいとか、そんな上辺で見てるような人には絶対に御せないと思う」

 なんと失礼なことを言い放ちやがるのか、このバカ後輩は!
 私がどれだけ会社で人と円滑に付き合うために、上辺を取り繕っているのか知っているくせに、暴露するバカ者め。
 これが取締役の前でなければ、最大級の罵倒をお届けしてやるのに!

 半分、顔が夜叉のようになりかけている私の肩を抱いたまま、成瀬はなぜか優越感を口調に滲ませる。

「まあ、たとえ先輩をどれだけ理解して本気であったとしても、俺は誰にも譲る気も渡す気もないから。ようやく手に入れた大切な人なんだ。だから怜司さん、手を引いてよ」

(何を人前で、しかも取締役の前で言ってんのよ、このド阿呆が!)

 罵りたいのに、成瀬の言葉が私の心に麻酔をかけていく。

 肩に置かれている手を払いのけ、「業務中にふざけんじゃないわ!」と後輩を注意しなければいけないとわかっているのに、腕も指も甘く痺れている。

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