ノラネコだって、夢くらいみる

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「さて。どこに送ればいい?」

 帰りのタクシーの中で、そう聞かれる。逢阪と私は後部座席に乗っている。

「どこって……家以外にどこがあるの?」

「そりゃ、いちるんとことか」

「は?」

「俺んとこ、来る?」

「………はぁ!?」

「あ、今お前、エロい想像した?」

「するかっ!!セクハラおやじ!!」

 この、酔っぱらい。寿司屋でたらふく飲んでいたから、発言がいつもよりおかしいんだ、きっと。

 しかも私に寄りかかってきているし。離れろっ…!お酒くさいったらありゃしない。

「鈴」

「な、なに?」

「俺の胸で泣いてもいいぞ」

「だっ……誰が泣くか……!」

「まだお前、俺の半分しか生きてねーんだもんな」

「………?」

「辛いに決まってるよな」

 …………モモとのことを言っているの?

「友達がなんだ。あるだろ。お前の居場所」

「え?」

「俺は、お前の味方だ」

「………!」

「何も信じられないなんて悲しいこと、絶対に思うなよ」

「………うん」
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