ノラネコだって、夢くらいみる
 だったら、そういう勘違いするようなこと、言わないで。

「………」

 否定しないんだ。やっぱり、いるんだ。

 私に対してのそういう言葉は、全部、その場限りのものなんだ。

「彼女は、別に婚約者じゃない」

 彼女?

「結婚を迫られているのは事実だ。それを週刊誌に婚約者だと騒がれてるけど、俺は結婚する気なんてない」

「……結婚詐欺師」

「心外だな。別に交際だってしてない。一方的に好かれてる」

「どっちつかずな態度とってるからじゃないの?」

「あ?」

「どうせ、その人の前でもいい顔してるんでしょ」

「………」

 車が、私のよく知らない道を通る。繁華街からそれていく。

「ね、どこ行くの?」

 逢阪は、何も答えない。

「どこの空港に迎えに行くの?こっち方面に空港なんてないよ」

 私は地図アプリを開いて調べてみる。

「ちょ、聞いてる?この、方向音痴!」

「うるさい。少し黙れ」

「は…?」
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