ノラネコだって、夢くらいみる
 それから私がいちるを呼び出して、いちるのお土産話を聞いたりゲームをしたり、朝まで逢阪の家のリビングで過ごした。

 半年ぶりに会ういちるは、現地で話していたという英語が流暢だった。

 そうしているうちに寝てしまい、気づいたら朝の10時で、逢阪もいちるもいなくなっていた。

 2人とも仕事に出かけたのだろう。

 いちるは帰国したばかりだというのに、仕事がつまっているらしい。時差ボケとか大丈夫かな。

 メールがきてる。逢阪だ。


『コートのポケットに鍵入れてあるから、どこか行く時はそれで施錠しろ。ゴミ捨てやコンビニくらいといって開けっ放しはヤバいぞ』


 なにそれ。

 たしかにコートを探ると、見知らぬ鍵が入っていた。


『で、施錠したあとこの鍵はどうすればいいの?』


 と、返信をしておいた。


 いちるから、ラインがきていた。


【いちる】鈴、しばらく会わないうちに大人になっちゃったんだね…
【いちる】お兄ちゃんは悲しいよ


 いつからあなたは、私の兄になったんだ。

 勘のいい、いちるのことだ。私が逢阪の家にあがっていること。逢阪の家のスウェットを着ていること。そして昨晩、始終ドギマギしていたことで、何か察したのだろう。


【いちる】だけど鈴が幸せなら僕は
【いちる】温かく見守りたいな


 いちる……


【いちる】(スタンプ)
【いちる】(スタンプ)


 いや、見守ると言った側から、そんな悲しい顔した子犬のスタンプ送ってるし……


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