ノラネコだって、夢くらいみる
 夢じゃないんだ。

 昨日の出来事。

___〝俺だって、お前に惚れてるんだ〟

 たしかに逢阪は、そう言った。嬉しい。嬉しすぎて、脳内でその台詞がループされている。

 逢阪って完璧人間に見えて、案外不器用なのかな。見てわかれよ、なんて台詞で女を落とせると思ってるの?

 ………いや、まぁ、落ちましたが。

 キスって、あんなに心地いいものなんだな。

 もう1度、したいなぁ……

 って、バカか私。そんな何回もできないでしょう。

 ………あれ?できるのかな?

 だって、私、一応あの人と両想いなんだよね?

 信じられないけど、そういうことになるなら、別にまたできるってことになる。

 だけど、別に付き合おうとか言われたわけじゃないし。なにこれ。

 こんなこと、誰にも相談できないしなぁ……

 私に好きと言ってくれたいちるに恋の相談ができるわけもなく。

「………とりあえず、Twitterの返信でもしようかな」

 その時、スマホに逢阪から返信がきた。

『鍵はもっとけ。やる』

 ………えぇ?

 こんな大事なもの、受け取れない。万が一なくしたら大変なことになる。

 それに、私が持ったままだと勝手に出入りされるかもしれないのに、嫌じゃないのかな?

 ってか、ここに出入りするとこ誰かに見られるって普通にヤバくない?

 こんなの、もらっちゃったら、まるで私、逢阪の………

 ………

『いらない。もう帰るから、次会った時には返す』

 そう一言、返信しておいた。
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