ノラネコだって、夢くらいみる

 映画の出演者、関係者が多く参加する打ち上げのあった夜、佐伯さんが私に話したいことがあると言ってきた。

 もうこの男とは、仕事場での必要最低限な会話しかしていなかった。

 勘のいい芦原さんが何か気づいていたようにも思えたけれど、彼女が必要以上に私たちを詮索してくることはなかった。

「なんですか?」

「キミのこと、諦めたくても諦めきれない。俺と付き合わない?」

「無理です」

「……だよね。そう言うと思った。俺、あの日キミに言われた言葉で、目が覚めたんだ。今日は、謝りたくて」

「謝る……?」

「この前はごめん。もうあんな無茶なことしないから。仕事でまた一緒になった時は、よろしくお願いします」

「………こちらこそ、お願いします」

「お互い、頑張ろう。RIN」

「はい」

 佐伯さんと握手をして、皆のいる席に戻った。

 佐伯さんの心の内は、私にはわからない。

 だけど本音であって欲しい。
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