ノラネコだって、夢くらいみる
___元旦

 私は、家のリビングのコタツで寝正月を過ごしていた。

 そこから見える本棚には、私が載っている雑誌が揃っているのが見える。小さな記事から表紙のものまで。

 おじいちゃんとおばあちゃんも、ちゃんと見てくれてるんだ。

 仏壇の前で、手を合わせる。仏壇に飾られている母の写真は、とても若い。私は、母親似だ。つい自分かと思ってしまうほど、似ている。

「鈴ちゃん、お仕事は明日からって言ったかな?」

「そうだよ」

 おばあちゃんも私と同じくコタツに入っている。そしてテレビを見ている。正月の特番だ。

「ちょっと散歩してこようかな」

 正月の昼だ。テレビを見たり、雑煮を食べたり、寝正月を過ごしたりと……家の中にいる人が多いからだろうか。道路は車がほとんど通っていないし、歩いている人も少ない。

 1年と数ヶ月通っていた中学までの通学路。当時はえらく遠く感じたっけ。今となってはたいしたことのない距離。

 そこの交差点から学校まで、ほんの数分の間を、モモと歩いた。

 ……何を思い出してるんだろう。思い出してもいいことなんてないのに。

「鈴ちゃん?」

 …………え?

 振り返ると、そこに、一人の女性がいた。お腹が大きい。妊婦さんだ。

「…………モモ」

「全然見かけないから、引っ越しちゃったのかと……」
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