ノラネコだって、夢くらいみる
「この化粧も髪型も、男ウケ狙ってる。せっかく女の子に生まれたんだもん。お洒落したい、可愛く見られたいって思うのは、悪いことじゃないでしょ?」

「………うん」

「だから、許せない」

「え?」

「鈴ちゃんみたいに、ナチュラルで可愛い子」

(私が……ナチュラルで可愛い?)

「私、無愛想だよ」

「それが可愛いんだよ。ツンツンしてる鈴ちゃんから、自分だけに向けてくれる笑顔を発掘したくなるっていうか」


なに、発掘って。


「目だって、パッチリで」

「百瀬さんの方が大きい」

「私のは、ちょっと、作ってるから」

「ふーん……」

「叱られない程度に化粧して、コンタクトだって入れてる。内緒だよ?先生たち年寄りだから、カラコンも黒とか茶系なら、あんまり気づいてこないんだよねー」


 驚くほど正直な人。

 毒づいてるけど気を悪くさせるような言い方でもない。むしろ綺麗ごとしか言わない子よりは人間味がある。

 私、この子好きかも。


「私は、ブスとか、可愛くないって言われる」

「それはねー、多分……ひがまれてる。日下くんと仲いいから」

「大地と?」

「女の子のやっかみって怖いよね」

「私のこと、許せないけど、こうして話してくれるの?」

「鈴ちゃんのことは嫌いじゃないよ。むしろ友達になりたいなって思ってる」

「……友達?」
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