ノラネコだって、夢くらいみる
「日下くんにフラれちゃった」


 そう言ってその子がポケットから取り出したものは、ビスケットみたいなお菓子。もしかして、それがご飯…?


「これね、おからクッキーだよ」


 私がジロジロ見すぎたからか、聞いてもないのに教えてくれた。


「おから……」

「お腹で何倍にも膨れるから、お腹いっぱいになるの」

 
なるほど。


「私、百瀬茉由(ももせまゆ)。モモでもまゆでも、好きに呼んでくれていいよ」

「……わかった」

「鈴ちゃんって呼んで良い?」

「かまわないけど」

「鈴ちゃん今日は、つけてないんだね。真っ赤なリボン」

「あれは、校則違反だから」

「リボンだけじゃない。黒いニーハイも。凄く可愛かったのに」

「………」

「あなたの、ああいう自由なとこ、私好きだったのに。猫ちゃんみたいで」


 猫……って、百瀬さんまで……


「近くで見ると、思った以上に可愛い」


 そう言って、顔を近づけてくる。


「な、なに?」

「化粧水、何使ってる?」

「そんなの使ってない」


 朝起きて、水で顔を洗う。以上。


「嘘!?」

「ってか、百瀬さんの方が可愛いから。きっと、多くの男子は百瀬さんみたいな子が好きだよ。モテるでしょ?」

「うん」


(……っ!?)


 ここで肯定されるとは、思っていなかった。

 いや、『そんなことないよぉ』なんて言われたら言われたで、殴りたくなるかもしれないが。


「私、努力してるもん」

「努力?」
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