縁〜サイダーと5円玉と君の靴ひも〜
朝起きても、在花が部屋から出てこないのを、私も琥珀も母もさすがに心配になった。

「ごはん、昨日の夜から食べてないよね。大丈夫かな」

私は朝食を食べながら不安になる。

「とりあえず、部屋に軽く食べられそうなもの、置いてきたから。食べてくれればいいけど」

母がバタバタと支度しながらも、在花の様子が気になるようで、腕時計が反対になっている。


「腕時計、反対になってる」

「あ!やだ、もう。はぁ…なるべく早く帰るから。行ってくる」


バタバタとスリッパの音が響いた。


学校に着くと、陽色が廊下で話しかけてきた。


「な、あの5円玉って何が見えてんの?」

5円玉…そういや見てない。委員長のことがどうにか収まったってことは、次は何が見えるんだろう。


「見てみようか」

ポケットから5円玉を出した。


私達は図書室へと入り、百科事典だの辞書が並ぶ人があまり来ないところまで来て5円玉を覗いてみた。


「あ、晴輝…」

加瀬君?


「一体何が起こるんだろう」

加瀬君ってことは女絡みとか…

めんどくさいことにならなきゃいいけど。


「まぁ、何か起こったら連絡して」

陽色はそう言うと図書室を出て行った。


「何かって何よ…」


女絡み?
それしか想像できない。


図書室から出ると藤本先生と出くわした。

「あ、おはようございます」

「おはよう」

以前とは違う、もっと親しみのこもった笑顔が返ってきた。


あの2人は結婚するのかな、いつか…

藤本先生の後ろ姿を見ながらぼんやり思った。


恋人達はどういうことして過ごしてるのかな…

好きってどんな感じ?

好きな人に好かれるってどんな幸せ?


わからないことばかりだけど、人の恋愛は見てると楽しい。

でも、昨日の在花みたいに傷つく時もあるんだよね。
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