静寂と毒牙

 逃げ出したいとは思わない。

 寧ろ、焦げる肉の痛みに合わせて身体が拒絶し騒ぐことを彼女は憎んだ。

 愛の証を受け入れられないこの弱い身体を憎んだ。

 無数に刻まれた痣が増える度に、彼女はひりつくタダレ達を指で撫でる。

 愛しい傷と、まだ付いていない肌には爪を立てる。

 愛を全身に、自分からねだることはしない。

 痛みの伴うこの愛を自ら懇願することはまだ出来なかった。

 でも、いずれ・・・

 目を閉じ彼女は今日も静かに傷を受け入れる。

 愛を受け入れる。。

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