アナタの過ち



「…ごめん」

謝られても困る。

『…』

「…」

『…寒い。帰る』

「…うん」

『…』

「…」

無言で原付のある場所へ2人歩く。

『…』

「…」

砂利が混じった砂浜を踏む音だけが聞こえる。

本当は、波の音も風の音もある。

でも私には聞こえない。

無理矢理された時に聞こえた音なんて、聞こえない。

聞きたくない。

『歩いて帰れるから』

その場で別れようとした。
またね、とかそんな別れじゃない。

これで終わったはずだから。

「待って」

『…』

「…これ」

私の目の前に出した物。

プレゼントというラッピングされた、今1番いらない物。

『…』

それは何?
罪滅ぼし?


「…」

確かに私は強い抵抗をしたわけじゃないかもしれない。

でも同意の上でした行為じゃない。

これを私が貰って、この人は自己満足というくだらない安心に浸るわけだ。

『…』

何も言わず受け取った。

『…』

そして立ち去ろうとした時。

「俺の事嫌い?」

『嫌い』

こんなんで好きになる方がおかしいんじゃない?

「じゃあなんで来たの?」

的を得た質問。

その通りだよ。
私も自分がもうわからない。

意味不明なのはお互い様だった。



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