見えない何かと戦う者たちへ
「…え?あの子、今週週番だっけ?」
「いや、先週だよ」
「じゃあなんで…」
「…気になるなら本人に直接聞いたら?」
「懍は知ってるの?」
お弁当を食べ終わった懍は、
丁寧に袋に包んでいく。
明日香は彼女の言葉をとりあえず待った。
「まあ、私は美結のこと大好きだからね」
答えになってないじゃんとは
つっこまなかった。
懍はたぶん美結のあとでも追いにいったのだろう。
もしくは
美結に群がる男子の駆除か…。
「本人に直接聞いても正直に教えてくれるタイプじゃないしなぁ」
明日香は
まだ美結のことを大声でほめ続ける中二病に目だけ向けた。
「あれ?垣内一人なん?」
「いや~、さっきまで友達いたんだけど
あいつ週番で職員室いった」
明日香たちがいたところから一番離れた席の男子が
クラスメイトの一人に話しかけられていた。
「あ~、相田そのだっけ?
あいつさあ、この前落ちたシャーペン拾ってやったら
なかなか受け取らなくてさ…あれなんだったんだろ」
「あ~」
垣内はこの学校でまずいと評判のお好み焼き味の紙パックジュースを
飲みながら答えていた。
答えようとはしているようだが
彼自身どういえばいいのかわからないようだ。
「まあ、今度本人に聞いてみるよ」
「うーん、そーしてくれ」
質問してきた男子がどこかに行ってしまったあとも
垣内はうーんとうなりながら考え込んでいた。
明日香は暇だったので
しばらく垣内という人間の観察を行うことにした。
(…それにしても)
お好み焼き味の紙パックジュースを見てみる。
いちご牛乳と交互に飲んでいるのだ。
明日香は吐きそうになる
気持ちを押さえて観察した。
(よく、飲めるなぁ)