見えない何かと戦う者たちへ
わろみゆう

side.その(?)



この世界は菌やウイルスが
あちこちに潜んでいて実に汚い。

だからいつも殺菌された手袋をはめ、
他人とはあまり接しないようにしてきた。

自分はいつだって目に見えない菌やウイルスと
戦っていた。



そして君との戦いも
目に見えないものな気がする。



自分はこのままでいいと思っていたし
ほかに何かあるなんて思ってもみなかった。

きっと他人と比べて自分は目に見えない何かと戦う、闘うものの数が多かったんだと思う。



いや、そんなことはないか。
みんなそれぞれ見えない何かと戦っているのだろう。



家族、
その言葉を知っているはずなのにどういうものかがわからない。

なぜわからないのかも
わからない。



わかるのは
人に触れようとすると胸が真っ白に塗りつぶされる感覚がすることだ。

絵の具やペンキではなく
例えるなら黒板で使う白いチョーク。

強く塗りつぶそうとすると
ボロボロと粉が落ち、
ただ塗るだけだとただひたすらに薄くなるだけの…。












side.みゆう

ソノくんの目は
本当に純粋で、わざと言っているわけではないことはわかっていた。


だが、だからこそ
衝撃的な問いだった。



まるで
テレビドラマに出てきた難しいセリフを親に聞いている子どもだ。


そのとき近くに座っていた明日香も口を半開きにして立ち上がった。



それでもキョトンした表情で
彼は私たちを見上げていた_______。




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