見えない何かと戦う者たちへ

―――――ブーブーブーブー………

歩き始めてからソノの携帯がまた鳴りはじめた。

さっきより長く鳴っているので
電話みたいだ。



傘を右手にもちかえて
左ポケットから携帯電話を取り出した。

「……」

「もしもしっ!?ソノか?」

この声は垣内のものだ。
ここは住宅地で歩道というものはなく車が
人の歩いているすぐ隣を通っていく。

ソノは周囲に
気をつけながら携帯片手に歩いていた。





「…ちょっと話があるんだけど
今から会えるか?むりなら電話でもいい」

「…」

「…そ、の?」





ソノはごみ収拾場所を通りすぎて
電柱にあたるギリギリで立ち止まった。

傘を頭上から離してみるが
髪に雫が落ちてくる感覚はない。

ソノは空を仰いだ。






「…なぁ、垣内
手伝ってほしいことがあるんだ」

「?」






まだ星は曇ってて見えないが
そのうちキレイに見える予感がした。


「潔癖症を治したい、
協力してくれるか?」


ソノは誰もいないが
その分空に向かってニカッと笑った。





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