Another moonlight
ユキは不意に、あの夜アキラにキスされたことを思い出した。

急激に鼓動が速くなって、頬がカーッと熱くなる。


“オレは中学ん時からさ…ずっとオマエが好きだったよ。男と思われもしねぇのに、こんなに長い間片想いしてバカみてぇだな”


切なげに低く呟くアキラの声が、耳の奥で何度も響いた。

(私と一緒だ…。私もリュウが好きだった……けど…。)

リュウトがハルを選んだと知ってあんなにショックだったはずなのに、アキラに友達をやめると言われたことの方がもっとショックだった。

あの日から、リュウトのことよりアキラのことばかり考えていることにユキは気付く。

いつも一緒にお酒を飲んでバカみたいに憎まれ口を叩き合って、大笑いした。

(アキがいないと…なんでこんなに寂しいんだろ…。)


“最初っから素直にそう言え、バーカ”


またアキラの言葉と笑い声が脳裏をかすめた。

じわりと溢れた涙が、枕にシミを作る。

(口が裂けても言うか!!なんだよ…自分だって素直じゃないくせに…。好きなら好きって素直に言えよ、バーカ…。)


心の中で散々悪態をついても、涙が溢れて枕のシミを広げていく。

元々恋人でもないし、友達でいることも拒絶された今、アキラがどこで誰と何をしていようが、自分には何も言えない。

長い時間をかけて積み上げてきた信頼とか絆みたいなものは、一瞬にして跡形もなく消えてしまった。

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