Another moonlight
目の前ではカンナが涙で顔をグシャグシャにして泣きじゃくっている。

好きな人に自分を好きになって欲しい。

アキラにはカンナのその気持ちが痛いほどわかる。

ただ愛する人に愛されたくて一生懸命なだけなのに、カンナのその想いは強過ぎて、間違った方向に向かっているのだとアキラは思う。

カンナをこんなふうにしてしまったのは自分なのかも知れないと思うと、アキラは罪の意識でカンナを見捨てられない。

(どっちにしてもユキがオレのものになることはねぇんだし…カンナはこんなにもオレのこと想ってくれてる…。だったらもう…。)

ユキのことはきれいさっぱり忘れてしまおう。

胸を痛めながらもずっと大切にしてきた友達としてのユキとの関係も、終わらせてしまったのは自分自身だ。

長い間胸に閉じ込めてきた叶わない恋心なんて無駄なものは、潔く捨てた方がいい。

こんなに自分のことを想ってくれる人なんて、この先現れないかも知れない。

だったらカンナの気持ちにきちんと応えるべきではないか。

少し時間はかかるかも知れないが、今度こそユキの身代わりなんかではなく、カンナ本人ときちんと向き合い、好きになろうとアキラは決心した。

「カンナ…わかったから…もう泣くな。」

アキラはカンナの涙をシャツの袖で拭った。

「アキくん…。」

「だからな…この格好はやめろよ。カンナらしくねぇし、いつも通りのカンナの方がずっといい。」

「そうすれば…アキくんは私のこと嫌いにならない?ずっと一緒にいてくれる?」

切り裂かれるような胸の痛みをかき消してしまおうと、アキラはカンナを抱き寄せた。

「…ああ…一緒にいる。」

これでもう、後戻りはできない。

(さよなら、ユキ…。)


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