Another moonlight
「どうしてもリュウには会わせたくなくて、ライブにも呼ばなかったんだ。それなのにさ…オレの知らないうちに二人は偶然再会してたんだよな。オレが会わせなくても、結局は会うようになってたらしい。」

「…運命的な?」

「…的な。」

トモキは苦笑いを浮かべて、ウイスキーを一口飲んだ。

「リュウ本人がチラッと言ってたんだけどさ…トモと彼女が別れたのはリュウが原因だったのか?」

アキラがためらいがちに尋ねると、トモキはまたウイスキーを少し飲んで、小さく息をついた。

「リュウだけが悪かったわけじゃねぇと思うぞ。弱くて頼りないオレのせいだったとも思うし。みんな心の弱いとこがあんじゃん。それが偶然重なっただけだ。」

「そうか…。」

「この間、うちのバンドのユウに言われた。人生はなるようになってるんだって。あのままアユちゃんと平穏に過ごしてたら、オレはきっとロンドンには行ってない。大学出て就職して、きっと今頃普通のサラリーマンになってただろうな。」

頭が良くて人当たりが良くて、誰からも好かれる真面目な好青年だった若かりし日のトモキを思い出し、アキラは思わず吹き出しそうになる。

「今となっては想像つかねぇな。」

「だろ?そう思えばつらかったことも、必然なのかなって思えた。だからまたアユちゃんと会えたのは、そうなる運命だったのかなって。」

トモキはなんともない顔をして話しているけれど、きっと親友のリュウトを許すには長い間一人で苦しんだのだろう。

それを乗り越えて笑っているトモキは強いとアキラは思う。

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