トゲトゲの君と、グダグダの俺。


君がこの部屋を出てから、カレンダーを三回もめくった。

ひさしぶりに味わうひとりきりの時間に思いきり羽根をのばして楽しんだのは、せいぜい最初の一、二週間。
部屋でひとり食事をするのが味気なくて、独身の同僚や後輩を誘って飲み歩いていたら、あっという間にお財布の中が空になって驚いた。
君がきちんと俺の健康と栄養を考えて作ってくれていた毎月の食費と同じ金額が、たった数回飲みに行くだけで簡単になくなることにはじめて気付いた。

そして、なにも言わなくても俺の財布の中身が減っていたら、君が黙ってお札を足していてくれたことにも。

それに気づいてしまったら、酒も外食もあまりおいしいと感じなくなってしまった。
部屋で君と一緒に食べる、ちょっと味付けの薄い手料理の方が、何倍もおいしい。

ねぇ、君と一緒にご飯が食べたいよ。
くだらないテレビを見て、一日の報告をし合って。
会社の愚痴ばかり言う俺を、いつもみたいに叱ってよ。

靴下を脱ぎっぱなしにするなとか、お風呂の後はちゃんと水滴を拭いてから出てきてとか、トイレの蓋はちゃんと閉めてとか。
いちいち眉を吊り上げて怒る君の顔が懐かしい。

ひとりになって改めて、愛していたんだなと気づく。
そして、ちゃんと愛されていたんだなと実感する。
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