トゲトゲの君と、グダグダの俺。


雪平鍋に水を入れ、火にかける。ぽこぽこと底から湧いてくる気泡を眺めながら、換気扇の下で煙草を吸う。

こんなことを君の前でしたら、眉を吊り上げてヒステリックに怒られるんだろうな。
禁煙が出来ない意志の弱い俺と、煙草嫌いの君との妥協案で、喫煙場所はベランダだった。
夏場はまだいいけれど、冬の寒さの中、狭いベランダでサンダル履きで煙草をふかすのは辛かったな。

君がいない部屋は寂しいけど、室内で気兼ねなく煙草を吸えるのは、数少ない嬉しいこと。

お湯が沸いた鍋の中にインスタントラーメンと生卵と冷ごはんを入れて、テキトーに茹でる。
そうだ、と思いついて冷蔵庫からにんにくのチューブを出して入れてみる。
野菜も取んなきゃななんて、気休めのように冷凍のほうれん草を凍ったままぶちこんで、ぐつぐつ煮込めば今日の夕食の出来上がり。

皿を洗うのが面倒だから、鍋に入れたままリビングに移動する。
その辺に落ちていたジャンプを鍋敷きがわりにして、テーブルの前にどすんと座った。

「いただきます」

そう言って手を合わせたけれど、返事はない。
テレビから流れるバラエティー番組のにぎやかな声だけが部屋に響いていた。
その虚しさを振り払うように、わざと音をたててごはん入りのインスタントラーメンをすする。
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