オオカミ御曹司に捕獲されました
バチッと彼と目が合う。

ヤバい……目が合った。

すぐに逃げなきゃ。

「五十嵐さん?」

杉本君は私を見て少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔を作って取り繕う。

「ごめんね。五十嵐さん濡れちゃったね」

すまなそうに謝ると、杉本君は椅子から立ち上がり、ズボンのポケットからハンカチを取り出して私に差し出した。

「これ、使って」

杉本君と関わるのが嫌で、私は頭を振って断った。

「大丈夫。大したことないから」

この場から離れようとすぐに立ち上がろうとすると、彼の身体にぶつかってメガネと本を床に落としてしまう。
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