オオカミ御曹司に捕獲されました
「あの子に関わるなと?だが、彼女の漬け物はまた食べたいなあ。屋上にテーブルを置くといいかもしれん。桜井君、屋上にテーブルセットを頼むよ」

おいおい、公私混同してるだろ。

俺は親父の言葉に呆れた。

「どんだけ食い意地が張ってるんですか?桜井さん、こういうのは適当に聞き流していいですから」

俺が桜井さんに目を向けると、彼は柔らかく微笑んだ。

「はい。承知しています」

「毎日のように会食してると、ああいう素朴な味が恋しくなるんだ。仕事もやる気になるしなあ。桜井君、そこも含めて善処頼むよ。私の経営手腕は君の肩にかかってる」

「何バカなこと言ってるんですか?それは、あなたの最愛の妻にお願いして作って貰えばいいでしょう?」

ハーッと溜め息交じりの声で言いながら、額に手を当てる。

まともに相手をするのも疲れる。

「お前、ケチだな。独り占めするつもりだろう?」

親父が目を細め、年甲斐もなく拗ねたふりをする。

「五十八のおじさんが拗ねても可愛くないんで止めて下さい」

そう冷たい眼差しで言うと、桜井さんはククっと笑った。

「同感です」
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