オオカミ御曹司に捕獲されました
「夏バテかな。夜はあっさりしたもの食べようか」

公衆の面前なのに、杉本君は甘い声で言って私の頬を愛おしげに撫でる。

ビクッと反応する私の身体。

自分の魅力を熟知しているこの人には、こんな些細な動作でもどれだけ私をドキッとさせるかわかっているのだろう。

だって杉本君の目が笑ってる。

私は彼の手のひらの上で踊らされてるんだ、きっと。

私の反応が面白くて私をからかってるんだろうけど、おばあちゃんを巻き込むなんて酷いよ。

私はランチの間、ずっと仏頂面だった。

二時間程レストランにいると、私と杉本君はおばあちゃんに別れの挨拶をして老人ホームを後にする。

杉本君に怒っていた私は、彼を無視して早足で駅までの道を歩いた。

もう杉本君なんか知らない!
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