国王陛下の独占愛

   「国王の薬師だな」

   「はい」


 短くソリは答える。

 下手に騒ぐより、ここはまずおとなしくしていようとソリは思った。


   「お前にやってもらいたいことがある」


 くぐもった声で男がそう言い、懐から銀紙に包まれた
 小さな包みをとりだした。


   「これを、お茶に混ぜて国王に飲ませろ」


 ソリは目を見開いた。

 こんな風にナイフで脅されて渡されるものが、良いもののはずがない。


   「それは......なんですか」


 男は答えない。


   「毒、ですか」


 ソリの問いに男は短く息を吐くと言った。


   「毒殺するようなものではない、徐々に身体を
    弱らせる薬だ」

   「そんなもの、陛下のお茶に混ぜるわけにはいきません」


 即座に否定の言葉を口にしたソリに、男はずいっと一歩近ずくと

 鋭利なナイフをソリの顔の前にかざした。
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