国王陛下の独占愛

   「そんなもので脅されても、私はやりません」


 目の前のナイフの向こうにある男の顔を睨めつけながら、
 ソリが言うと、男の目が、可笑しそうに細められた。


   「お前が断ることで、命を落とすのはお前じゃない、
    お前の祖父だ」

   「お祖父様......」

   「そうだ、お前が家に帰り着いて目にするのは、
    血まみれの祖父の姿だろうな」


 ソリはすぐに走りだそうとした。

 祖父が危ない。

 だがすぐに男に肩を掴まれ、グイと押し戻される。


   「おっと、そんなに急ぐなって。まずは返事を聞かせてもらおうか
    今度は前とは違う返事をな」


 弱いものをいたぶるような声で男が言う。

 ソリはぎゅっと唇を噛んだ。

 どうしたらいいだろう。

 ことわれば、祖父の命が危ない。

 だが、承諾すれば、国王に毒を盛ることになる。


   「まずは、二回分だ、これを三日に一度ずつ飲ませろ」


 黙ってしまったソリの手を無理やり開かせ、男が銀の包みを握らせる。


   「また会いに来る。もし、断れば命がないのは祖父だということ
    を忘れるな、もし、お前が誰かにこのことをしゃべってもだ」


 それだけ言うと男は、道具倉から出て行った。

 銀の包みを握ったまま、唇を噛み、ソリは暗い道具倉の中に
 立ちつくした。
< 46 / 125 >

この作品をシェア

pagetop